Column
コラム
「忘れられないこと」
せっかくこのような場でコラムを書かせて頂けるからには、自分の「好きなこと」を書いてみようと思いました。
テーマは音楽。
僕にとって、常に人生の支えであり続けた音楽のほとんどは『Mr.Children』の楽曲でした。
通称『ミスチル』、日本では知らぬ者はいないと言っても過言ではない国民的バンドですよね。
では、この記事を読んでくださっているあなたはミスチルといえば何の曲が真っ先に思い浮かぶでしょうか?
『終わりなき旅』、『名もなき詩』、『Tomorrow never knows』…このあたりの曲がおそらく上位に挙がるのではないかと。
もしかすると、今回僕から紹介させて頂きたい曲はご存知ないかもしれません。
今回僕が紹介させて頂きたい楽曲は、2007年に発売した『HOME』に収録されている『あんまり覚えてないや』という一曲です。
タイトルにもなっている「あんまり覚えてないや」という象徴的な言葉がまず気になりますよね。
この言葉は、楽曲を通して何度も繰り返し歌詞の中に現れます。
歌い出しからしばらく、とても日常的な描写がメインにこの歌は進んでいきます。
男女間の恋愛関係について。
あるいは、仕事のことについて。
ですが、そうした描写の最後は必ずこの言葉で締めくくられるんです。
「あんまり覚えてないや」
恋愛と仕事、それはほとんどの人にとって生活の主軸にあるもので、悩みもここから生まれることがほとんどですよね。
なのに、どうしてこの言葉で歌が締めくくられるのだろうと、僕も初めは不思議に思いました。
でも、考えてみると確かにそうかもしれません。
小さい頃に、本気で好きだった子のこと。
仕事を始めたばかりの頃の悩み。
当時は本気で悩んでいたことでも、十年、数十年と時が流れれば「あんまり覚えてないや」と言えてしまうことがほとんどなのかな、と思います。
でも、この歌は曲の後半になるとまるで正反対のメッセージ性を歌う歌になるんです。
“じいちゃんになったお父さん
ばあちゃんになったお母さん
歩くスピードはトボトボと
だけど覚えてるんだ 若かった日の二人を
あぁ きっと忘れない”
“キャッチボールをしたり 海で泳いだり
アルバムにだって張り付けてあるんだもの
ちゃんと覚えてるんだ ちゃんと覚えてるんだ”
そう。
恋愛や仕事のことは時が流れて忘れてしまうけれど、どれだけ時が流れても決して忘れはしないもの。
それが、産みの両親との思い出。
あまり筆者の個人的な事情を持ち込みたくはないのですが、つい最近筆者の父親に癌が見つかりました。
そんな時に、何気なく久しぶりにこの曲を聴いて、思いました。
どんなに小さい時のことでも、親とのエピソードって記憶に残っているんですよね。
適当に投げ飛ばした積み木が親父のおでこに当たって漫画みたいに腫れたこと。
肩叩き一回ごとに100円のお小遣いという制度ができたことで、四六時中父親に肩を叩かせろとせがんでいたこと。
初めての彼女が茶髪だったというだけで交際を猛反対されたこと。
全部、くだらないことかもしれないけれど、ちゃんと覚えているんです。
そしてこの曲を聴き終わってすぐに、久しぶりに実家に帰って親に会いに行きました。
そうしなきゃ、って素直に思えたんですよね。
このコラムを読んで「そういえば最近、親に顔を見せられてないな」思った方、きっといると思います。
良かったら、時々でいいから、親御さんに顔を見せに行ってあげてください。
きっと、その方がいつか大事なことを後悔せずにいられますから。
そんなことを考えさせられた、大切な一曲を紹介させて頂きました。
ご一読、ありがとうございました。